森博嗣「数奇にして模型」を読んだよ

 S&Mシリーズ9作目。
 模型展示会(コミケの模型版のようなイベント)が行われていた会場の控え室で、コスプレモデルをしていた女性の首なし死体と、殴られて気絶していたという男が発見される。控え室には鍵がかかっていて密室状態。内側からしか鍵がかけられない状況であり、当然、死体と同じ部屋にいた男が疑われる。更にこの男性、模型展示会場の近くの大学に通う院生なのだが、その大学でも時を近くして密室殺人事件が発生しており、そちらの被害者とも関係のある人物だった。果たして、いかにも怪しいこの男が犯人なのか、というようなお話です。
 前作「今はもうない」がシリーズの外伝的な位置づけだったこともあってか、本作ではシリーズファンへのサービスが満載だ。人気キャラである国枝の登場シーンは多いし、喜多や世津子などひさびさに登場する人物もいるし、金子君はかっこいいし、萌絵はコスプレするし、しまいには妙に色っぽい僕っ子まで出てくる。「キャラ萌え」方面のサービスでは本作がシリーズ屈指だろう。
 サービスと言えば、このシリーズでは哲学的「っぽい」会話やモノローグが読みどころのひとつだ。そんなに頭のよくない市井の読者(つまり僕のことだ)が理解できる程度の「知的」な論考部分は相変わらず楽しい。本作ではこれの分量が多かったように思われた。