杉山幌「嘘月」

 「R.I.P.」でデビューした杉山幌の2作目。面白かった! 特殊な能力を持った生徒が集まる学園を舞台にした、連作短編青春ミステリ。電子書籍雑誌「BOX-AiR」で毎月連載されていて、それを単行本としてまとめたもの。
「BOX-AiR」はアニメ化を視野に入れた作品を掲載していくというコンセプトの雑誌らしく、前作と比べるとかなりライトノベル的な方向に寄せて書かれていた。特に前半部分はウェルメイドなつくりで、キャラの掛け合いなども楽しい。「R.I.P.」や短編「完全幸福自殺論」で感じた、怒りにも似たむき出しのヒリヒリ感はおさえられている。
 自由に書けるデビュー作と違い、2作目以降は締め切りや枚数制限などの縛りが生じるものと思われるが、その中でどのお話もミステリとして上手くまとまっていた。デビュー作が魂で書いた作品ならば、こちらは技術で書いた作品という印象。それでちゃんと面白いのだから、間違いなく力量のある人。キャラもみんな可愛くて(キナコ氏のイラストも素敵)、またこいつらに会いたいと思わせてくれた。続編が読みたい。