森見登美彦「太陽の塔」

 森見登美彦の小説「太陽の塔」を読みました。森見登美彦の作品を読むのは「夜は短し歩けよ乙女」に続いて二冊目になります。「夜も短し〜」もそうでしたが、彼の作品はファンタジックな要素がさも当然のようにするりと物語に入り込んでくる。それがとても心地いいですね。フィクショナルな要素の扱い方が上手いんだと思います。
 冴えない京大生である「私」の手記という形式で物語は描かれます。「私」にはかつて水尾さんという恋人がいたけれど、振られてしまった。それから「私」は「水尾さん研究」と称して、こっそり彼女をストーキングするようになる。愚かしいその行いを、やたら大仰な言葉と衒学的な文体で語る、その落差が可笑しい。痛々しい「私」の生活、生態をいちいち格調高く語る馬鹿馬鹿しさが最高に面白い。